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手術件数の多い病院はレベルが高いのですか?
最近、新聞や雑誌で、病院のレベルを比べるために、カテーテルや手術などの件数を比較する記事をよく見かけます。たしかに、多くの患者さんが集まり症例数が多い病院は、実績と結果がよいからと、患者さんが集まりやすいと推測できます。ただ、大学病院や市中の大病院などは、同じ病気でもかなり難易度の高い患者さんが紹介される傾向にあるために、手術件数は必ずしも多くなく、成績も満足できる結果ばかりにはなりにくいのです。
たとえば、変形性股関節症や変形性膝関節症には、変形の程度や患者さんのリスクなどさまざまです。それゆえ、人工関節手術の難易度にもかなりの差があるのです。人工関節手術では、元気な患者さんで変形が比較的少ない場合と、糖尿病などで全身状態が悪く、高度の関節変形と骨粗鬆症のある患者さんの場合、難易度は比較にならないほど大きな差があります。その結果、手術後の経過の良し悪しも、難しい手術の場合より、簡単な手術の方がよくなりやすいのです。
難易度を比較する物差しがないために、数でしか比較検討できないといわれればそれまでですが、症例数による病院の順位表を見るにつけ、何かもどかしい気持ちになります。仮に症例数だけでランキングをつけるならば「症例の難易度は考慮されていません」という大きな但し書きをつけてほしいと思う医師は、おそらく私だけではないと思います。