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講演No.014
介護研修事業 ~身近に主治医を持つ~
日時:2004年11月14日13:00~15:30 場所:神戸市勤労会館 2階多目的ホール 主催:NPO神戸市難病団体連絡協議会
「リウマチで手術をした方がよいとき、しなくてもよいとき~手術の経験の深い開業主治医と手術の上手な病院医との連携~」リウマチで手術をした方がよいとき、しなくてもよいとき
~手術の経験の深い開業主治医と手術の上手な病院医との連携~
井尻整形外科 井尻慎一郎リウマチ治療の基本はやはり、薬、リハビリ、装具などの保存療法です。しかし、保存療法をいろいろ試みても、関節の痛みが強くて日常生活に支障がある場合や痛みはほどほどでも関節の破壊が強くなりつつあるときは手術をした方がよいことがあります。
例えば、膝関節痛がとても強くて、内服薬、装具、関節注射などを試みても痛みが軽減しない場合、また、関節の破壊が進行しつつあるときはむしろ人工膝関節の手術をすれば、多くの場合、膝関節痛から解放されます。また、膝痛のために服用していた薬を減らすこともできるかもしれません。
また、リウマチの患者さんは普段から全身の痛みに我慢しておられることが多く、手術後の痛みにも他の人より我慢強く、そのためリハビリもむしろ上手にできる可能性があります。言い換えれば、如何に普段痛みが強いかと言うことです。
薬にも得失があるように手術にも得失があります。医師にとっても自分で執刀した経験のない手術は、その良いところ、悪いところがわかりにくいと思われます。学会の発表などで手術成績が良いとあっても、実際は結果の良くない患者さんは隠されている可能性があります。
現在、リウマチに対する手術でとても結果が良いといわれているのは、人工膝関節置換術、人工股関節置換術、足趾の関節形成術、です。その他、いろいろな人工関節手術や、関節形成術、滑膜切除術、脊椎の固定術などがありますが、その成績はいろいろです。
リウマチの患者さんが主治医にしている開業医あるいは病院の勤務医でもすべての手術の経験はないと思います。でも、どれかの手術に経験が深く、上手であれば、その医師のそれ以外の手術に対する評価も信頼できる可能性が高いと思います。
今かかっている主治医が病院の整形外科勤務医であれば内科的治療と外科的治療をその主治医とよく相談してください。でも手術を勧められたときは他の医師にセカンドオピニオンを求めるのも良いと思います。
今かかっている主治医が内科の医師の場合、どうしても内科的に関節痛などがコントロールできないときは、やはり一度整形外科医に相談してみてください。しかし手術の前に関節注射や装具なども効果的です。そして手術をした方がよいかどうかよく相談してみてください。
有名な病院の有名な医師が必ずしも手術が上手とは限りません。また、症例を増やすため、経営のため、若い医師の教育のために手術を患者さんに勧めることもあり得ます。特に、手術の紹介で受診すると、紹介した医師の顔を立てるために、手術をするかしないかの中間の場合でも、手術を勧められることがあります。
外科医にとって手術が上手なのが一番大事なことです。そして、手術に哲学的な感覚を持っている事が二番目に大切です。単に手術をするだけでなく、その患者さんの病状、性格、家庭環境、経済状況などを総合的に考えてくれる外科医に手術を頼みましょう。しかし、そのような外科医を探すのが一番困難なことです。
そのためには今かかっている主治医が信頼する整形外科医を紹介してもらいましょう。