腱交差症候群
手関節や指を動かす筋肉や腱が前腕背側で交差する部分で炎症を起こし、痛みとギシギシという音(轢音(れきおん))を特徴とする病気です。頻度は高くないのですが、手首や手指を使いすぎたときや、重い物を急に持ち上げて手首を少しひねった後や、思い当たる原因がまったくなくても、前腕の手の甲側に強い痛みを生じることがあります。手首や手指を動かすと痛みが生じて動かしにくい場合もあります。また手首や手指を動かすと前腕伸側にギシギシ、ジャリジャリという音を感じたりあるいはザラザラした物が触れたりすることがあります。これは手首や手指を反らす(伸ばす)筋肉と筋膜の炎症です。軽い炎症はよくあるのですが、音を感じるほど強烈な痛みを生じる患者さんが、私の32年間の経験で7~8人おられました。強い消炎鎮痛剤の服用と湿布と装具で安静にしてもなかなか痛みはすぐには治まりません。範囲が広いのでステロイドホルモンの局所注射もあまり効果がなかったと思います。
最近は短期間だけステロイドホルモン、たとえばプレドニゾロンを1日10mgくらい服用してもらい、消炎鎮痛剤の服用や湿布を組み合わせて比較的早く痛みと炎症がとれることを経験しています。痛みが軽減するにつれて少しずつ手関節や手指の曲げ伸ばしの運動療法をアップしていきます。指圧や強いマッサージは厳禁で、かえって炎症を悪化させてしまいます。痛みが強い初期はしばらく冷やす方がいいのですが、少しでも痛みが和らげば温める方が血行がよくなり、早く治ります。