TFCCの炎症または損傷
手関節の尺側(小指側)には三角線維軟骨複合体とよばれる、軟骨と靱帯などで手根骨と尺骨を結合して安定化するクッションの役目をする組織があります。日本名が難しいのでTFCC(triangular fibrocartirage complexs)と呼ぶことが多いです。手関節の捻挫(ねんざ)の後などに3~4週間経って捻挫が治る時期になっても手関節の尺側部に痛みが残り、手関節を動かすと痛みが走る場合、しばしばこの損傷が原因になっています。レントゲン検査では異常を認めないため、痛みと圧痛の部位とケガの後であることなどから診断しますが、場合によっては手関節鏡という小さなカメラを挿入して診断と治療を行います。
開業してたくさんの手関節の捻挫や骨折を診療して、案外この状態が多いと感じます。少し前の解剖書にはTFCCは記載されていません。余談になりますが、医師が勉強する解剖の教科書は数十年前に確立された内容のものがほとんどのため、その後発見された組織が記載されていないことがあります。緻密なイラストの解剖書を見れば正確なものと思い込みますが、存在を知らずに何回解剖をしても見えないものは見えない、その存在を知れば見えてくる場合があるのです。実世界も同じだと思います。