指節間(IP)関節(親指の第1関節)の変形性関節症、リウマチ性関節炎、関節炎
親指は日本語では人差し指(示指)や中指と同じように指ですが、英語でもドイツ語でも、他の指とはまったく異なる呼び方をしています。たとえば英語では人差し指から小指まで "finger" ですが親指は "thumb" 、ドイツ語では "Finger" と"Daumen" です。このように欧米では親指は他の指とは異なる重要な働きをすると考えられてきました。人間と猿の違いの1つとして、人間は親指と他の指で物をつまむ "pinch" ができることがあげられます。人間だけがつまむという動作ができる動物で、そのため道具を作ることができ、さらに脳が発達したという説もあります。皆さんが親指をまったく使わずに1日を暮らすことを想像すれば、その重要性が理解できると思います。財布からお金を出すことも、服を着てボタンをはめることも難しくなるでしょう。それだけ頻繁に使えるように、また力を入れられるように太く短いのでしょうが、それでもいろいろな障害が現れます。
指の関節をIP関節といいます。親指のIP関節には、使いすぎによる関節炎や変形性関節症がしばしば起こります。関節リウマチの患者さんでは関節が弱いため、長年のあいだにくの字に曲がってしまうこともしばしばです。治療としては、テーピングなどによる固定や指輪のような装具などで愛護する、あるいはさらなる変形を予防することが大切です。湿布やクリームを使うことも痛みを取る効果があります。どうしても変形が強かったり関節がぐらぐらして強くつまめない場合は、IP関節の固定術を行うこともあります。動きが少し悪くなりますが、つまむ力が強くなります。関節炎・変形性関節症・関節リウマチに関しては総論の各項も参照してください。