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子どものばね指(強直母指(きょうちょくぼし)、強剛母指(きょうごうぼし)、握り母指)

 今回、この本を書くにあたり、かなりの本などにあたりましたが、子どものばね指については見解が混乱しているようで驚きました。私の経験も踏まえてそれらの知識をまとめると、多くは1歳から3歳くらいのあいだに、親が子どもの親指が伸びない、あるいは時々は伸びているが伸びたら曲がらない、曲がったら伸びない、などと気づくことで始まります。親が伸ばしてやるとカクッと伸びることもあります。親指の付け根の、手のひらの親指を曲げる屈筋腱の部分に腫瘤(しゅりゅう)を触れる場合も触れない場合もあります。親指の先の方のIP(第1)関節が伸びたままになったり曲がったままになる場合を子どものばね指と呼び、症状が強くIP関節が曲がったまま伸びない(たまに伸びることがある)のを強直母指あるいは強剛母指といいます。原因ははっきりわかっていませんが、母指屈筋腱が太くなって腱鞘(けんしょう)に引っかかる現象です。大人では、放置すると腱が縮んでしまう可能性がありますが、子どもの場合はその心配はほとんどありません。手術をするか、いつするかの議論は整形外科学会でもいつもありますが、現在の知見では、5~6歳まで待てばたいていは治る、1~4歳で腱鞘切開の手術をするには全身麻酔が危険である、小さすぎて手術が難しいなどの理由で、手術は5~6歳以降でもまだ治らない場合に行う傾向になっています。この間、親は心配でしょうから、整形外科医に半年ごとくらいに受診すればよいと思います。その間、お風呂で温めてから曲がった指を親がゆっくり愛護的に伸ばしてあげたり、親指の付け根のMP関節で膨らんだ部分を優しくマッサージしてあげたり、伸びたときに装具などで固定してあげる、などの方法を行います。
 これに対して、親指の付け根の関節(MP関節)が曲がったままで伸ばせない、親が伸ばせば簡単に伸ばせる場合を握り母指といいます。この場合も大半はばね指と同じく腱の肥厚による引っかかりと考えられていますが、ごくまれに母指伸筋腱の先天性欠損のこともあるので、いずれにしても整形外科を受診してください。母指伸筋腱の先天性欠損でなければ数年の内に自然治癒することがほとんどなので、整形外科に6ヵ月ごとくらいに受診しながら様子をみてください。
 私が研修医のころ、大学病院で母指伸筋腱の先天性欠損の幼児を担当させていただいたことがありましたが、珍しいので先輩医師が海外の雑誌にその手術などの症例報告をしていました。

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院長/医学博士 井尻慎一郎
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