いわゆる腰痛症
最近、腰痛の80%は原因不明などと脊椎の専門家がテレビなどで解説することがあります。3ヵ月以上続く腰痛を慢性腰痛といいますが、その中で原因がはっきりしない腰痛を非特異的腰痛といい、心理的要因である不安やうつと社会的要因である仕事や家庭のストレスが絡んで痛みを脳で感じてしまう状態ともいわれています。
確かに腰痛には精神的な部分もかなり関与し、ストレスや心因性の要素が強い腰痛もあります。ミステリー作家の夏樹静子さんの『腰痛放浪記 椅子がこわい』(新潮文庫)という壮絶な腰痛の治療の歴史を読めば、どんな検査でも原因がわからず、結局、仕事のストレスが複雑に絡まっていたというようなこともあることがわかります。しかし私は、腰痛というのはこれから説明するようにさまざまな原因があり、それらが時間のずれもありながら1つだけでなく2つ、3つ、あるいはそれ以上絡み合うために、症状も複雑で原因を見極めにくくなると考えています。いずれ腰痛に関する本も執筆する予定ですので、詳しいことはそこで述べたいと思いますが、大学の専門外来に集まってくる難しい慢性腰痛の患者さんなら80%は原因不明かもしれませんが、一般外来に来られる患者さんの腰痛の原因はもう少しわかると信じています。
非特異的腰痛は整形外科と心療内科が協力して治療していくため大きな病院でないと治療が難しいと思いますが、できる限りストレスを軽減する工夫をして、場合によっては心療内科のカウンセリングや薬剤を使いながら、整形外科的にはリハビリや運動療法などを取り入れて徐々にでも症状を軽減していくことが大切です。最近では認知療法といって、痛みに対する考え方を変えて、年齢で劣化することを受け入れるなど、痛みとじょうずに付き合っていく、多少の痛みを納得するなどを目標にした方法が取り入れられています。