尾骨の痛み、仙骨・尾骨滑液包炎、尾骨打撲・骨折
尾骨は俗称として尾てい骨とも呼ばれますが、脊椎の一番下にある、尻尾(しっぽ)の名残の骨です。お尻の中央の一番下にあって少し飛び出しているために、椅子に座ることの多い現代人にとっては炎症を起こしやすい部位です。また真上に寝ると尾骨が寝具に当たって痛みを生じることもあります。案外多い病気だと感じます。堅い椅子に長く座ったり、椅子に浅く座ったりして、尾骨に体重が長くかかることが原因であることが最も多く、まったく原因がわからないこともしばしばです。からだの中心は左右からの神経支配があるために敏感なのかもしれません。殿部(でんぶ) の筋肉が痩せて脂肪の少ない人は特に尾骨が相対的に出っ張っているので当たりやすいといえます。肘・股関節外側・膝・足関節によくみられる滑液包炎が、尾骨のすぐ上の仙骨部に生じている場合もあります。
尻もちをついて打ったときに打撲したり骨折したりすればやはり尾骨の痛みが生じやすく、また前述のように飛び出した尾骨に体重がかかりやすいので、痛みが長引く傾向にあります。私は初めから尾骨の打撲傷や骨折の患者さんには「いずれ治りますが、体重がかかりやすい部分なので、痛みが普通より長引くことがあります」と説明しています。
治療ですが、椅子に柔らかいクッションを敷き、尾骨よりも坐骨で体重を受けるように深く座ります。外来に来られた尾骨痛の患者さんはほぼ全員、椅子に深くかけてからだを少し前に倒して尾骨が椅子に当たらないように自然にされています。尾骨部分だけをくりぬいた円座は尾骨周囲の皮膚の血行を阻害するためにかえってよくないことがあります。痛みに対しては湿布やクリームを使いますが、湿布も貼りにくい場所です。尾骨は単に飾りではなく、靱帯(じんたい)が付いて骨盤の安定に役立っています。腰や股関節を動かす体操も必要です。気になり出したらいらいらする場所なので、散歩などの気分転換も大切です。ちなみに私は映画館でじっと座っていると尾骨部分が痛くなり、脚を交代で組み直して尾骨を少し浮かせたりしてそわそわしているので、周囲の人から変な目で見られないかいつも心配しています。