筋肉の疲労(疲労性腰痛)
体重の約5分の3が上半身にあるため、腰にはかなりの負担がかかります。それを支え続けているのが腰部の筋肉です。「疲労性腰痛」という言葉は、私が最初ホームページで解説しはじめた数年前はほとんどの整形外科の教科書や腰痛関連の本には記載されていませんでした。しかし疲労性腰痛はかなり多いと思います。上半身を支えている、脊柱の起立筋といわれる筋群の疲れによる腰痛です。同じ姿勢をずっと続けると、それを支え続けている筋肉が疲労してきます。肩こりも同じ機序で起こるのですが、筋肉が疲れると「だるい」「張った感じ」のような、痛みというより何となく鈍痛がある、などの症状が出ます。立ったり中腰で仕事などを続ける場合にも、椅子に座って仕事や勉強を続けるときにも起こりえます。椅子に座るときも、いろいろな筋肉を使っています。「筋肉の炎症」で述べた筋肉の炎症の場合は痛みが強いことが多いのですが、この疲労性腰痛はズキズキ痛むようなことはありません。久しぶりに長時間ハイキングをしたあと腰がだるい、慣れない日曜大工をした翌日腰が重いときなどはこの疲労性腰痛であることが多いのです。そのほか、年配の方で背中が曲がってくると、上半身がいつも中腰のように前方に曲がっているために、曲がり際の筋肉が疲れやすくなります。特殊な場合として、パーキンソン病の方は、常に筋肉が必要以上に緊張しているために疲れやすく、疲労性腰痛をきたすことが多いのです。
治療は肩こりとよく似ています。同じ姿勢を続けるなどの原因をまず軽減することです。仕事などで同じ姿勢を続ける必要がある場合は、たとえ数十秒間でもよいので、なるべく姿勢を変えて、休んだり、背伸びをしたり、軽く体操をしたりして、腰をほぐすことが大切です。若いときは何でもなかった仕事が、中年になるとこたえてきます。筋肉が柔軟性を失いつつあり、耐久性も弱くなってくるからだと思います。それなりにじょうずに筋肉を休める工夫をしてください。休憩時間にはリラックスしたり、適当に運動したり、精神的にも気分転換を行いましょう。家ではシャワーや風呂でゆっくり腰を温め、ほぐす体操を簡単にし、湿布などを貼ってぐっすり眠ってください。腰痛の一般的注意の項(「いわゆる腰痛症」)で説明したように、まっすぐ上向きに寝るのは腰痛を増悪することがあります。膝の下に座布団でも入れて膝を曲げるか、斜めあるいは横向きで軽く腰をまるめて寝てください。腰椎の筋肉が安らぎます。