内側半月板損傷
膝に体重がかかり、ひねったりしたために膝関節の内側・外側にある半月板が断裂することがあります。10~30歳の方ではスポーツなどで損傷することが多く、40歳以降では立ち座りの動作や階段の上り下りなどの際に軽微な外傷で生じることがあります。膝の屈伸時に痛みを生じ、関節が完全に伸びないことや曲がらないこともしばしばあります。さらに歩行中、「がくっ」と膝が折れたり「がきっ」と膝が引っかかったりすることもよくあり、これは半月板損傷の特徴です。
半月板損傷はレントゲン検査では診断できません。医師による膝の理学的検査(マクマレーテスト)などで診断します。確定診断のために、以前は関節造影検査をよくしたものですが、最近ではMRI(核磁気共鳴)検査でかなり正確に診断できるようになりました。
治療は、まず膝関節を安静にし鎮痛処置をします。関節内血腫や関節液が貯留しているときは適宜、吸引穿刺(せんし)します。半月板の中心部は血行がないため、断裂部が再癒合(ゆごう)することはありません。半月板の辺縁部の場合は血行があるため再癒合が可能であり、関節鏡視下に縫合することが可能です。特に若年者では断裂が大きい場合は縫合した方がよいでしょう。断裂が小さい場合は自然治癒することもあります。スポーツを控えてリハビリをする必要があります。十数年前に半月板縫合術が流行しはじめたときに私もこの手術に凝ったことがあります。外側半月板を縫合するときには腓骨神経(ひこつしんけい)を巻き込まないことが大切です。半月板損傷があると、大腿四頭筋の廃用性萎縮が著明に生じます。保存的に治療するにしても、手術するにしても、大腿四頭筋などの筋力トレーニングがとても大切です。
半月板の中心部の断裂の場合、小さな傷であればリハビリなどで症状が治まることも多いのですが、断裂が大きいときは関節鏡視下に部分切除した方がよい場合があります。断裂した半月板が引っかかって、膝がロッキングしたり、大腿や脛骨(けいこつ)関節面の軟骨が変性してきたりすることがあります。