圧迫骨折
圧迫骨折は、交通事故や転落事故などの強い力の外傷によるもの、転倒や咳・くしゃみなどの軽微な外傷によるもの、骨粗鬆症(こつそしょう)しょうがあるために外傷がなくて起こるものがあります。このほかに、悪性腫瘍の転移、感染による圧迫骨折もあります。
ここでは骨粗鬆症やステロイド性骨粗鬆症が基礎にあって生じた圧迫骨折について述べます。骨粗鬆症については総論の「骨粗鬆症」をご参照ください。高齢の方が転倒したりくしゃみをしたときなどに腰や背中に痛みを感じる場合、胸椎や腰椎の圧迫骨折を生じていることがあります。あるいはそのようなきっかけがまったくなくても圧迫骨折を生じることがあります。高齢の方が徐々に背中が曲がってくる(円背、亀背)ことは別に述べますが(「背中が曲がる」)、脊柱の前方部分が圧迫骨折を生じて椎体の幅が狭くなったり、椎間板がへしゃげてきたりすることが原因です。
痛みを生じたときにレントゲン検査をしてもすぐに骨折がわからないときがあります。背中や腰の痛みが続くときは1~2週間後にもう一度レントゲン検査をする方がよいでしょう。また、骨折の生じる部位は胸腰椎移行部(第11・12胸椎、第1・2腰椎)に多いのですが、しばしば病院やクリニックで腰のレントゲン検査を撮ったときに撮影部位から外れてしまうことがあります。交通事故や転落事故などによる骨折と異なって、神経の障害は少ないのですが、わずかな肋間神経痛や大腿神経痛、坐骨神経痛などを生じることもあります。
痛みは強いこともあれば、ほとんど感じないこともあります。痛みが強いときは、コルセットやギプス固定などをして安静にするのですが、痛みが強くないときも、圧迫骨折が徐々に進んで円背(えんぱい)変形(亀背(きはい)変形)がひどくなることがあるので、必要に応じて外出時だけコルセットなどで固定するとよいでしょう。
骨粗鬆症があれば同時にその治療を行います。骨粗鬆症の方が一度脊椎の圧迫骨折を生じた場合、ふたたび圧迫骨折を生じる確率が高いことがわかっています。その予防のためにも骨粗鬆症の治療が必要です。また、長く寝込むのもよくありません。痛み止めやコルセットなどをうまく使いながら、なるべく早く起きて生活することが大切です。寝ていると骨粗鬆症がさらに悪化し、筋力の低下などが早期に生じて、本当の寝たきりになってしまいかねません。