背中が曲がる
年齢とともに人間の背中は曲がってくる傾向にあります。むしろ反対にそってくる方はないと思います。これは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などが基礎にあって、脊椎の圧迫骨折が1ヵ所ないし数ヵ所に生じたり、椎間板がへしゃげるために生じます。
脊椎の中心には脊柱管という空間が頚椎から胸椎、腰椎、仙椎まであります。この中に脊髄神経が骨に守られて通っています。そして手に行く神経や肋間神経、大腿神経、坐骨神経などの枝を出します。加齢とともに、脊柱管を囲む椎体の骨や靱帯(じんたい)、椎間板などが変形、肥厚して脊柱管が狭くなってきます。脊柱管や神経の枝の出口は脊柱を前方へ曲げた(前屈)ほうが広くなります。反対にそると狭くなります。このため、ある意味では背中が曲がるという現象はからだの合目的的な防御反応といえるかもしれません。
しかし、あまり背中が曲がると、上半身を後ろから支える脊柱起立筋などが疲労しやすくなります。また、肺や胃などを圧迫して、肺活量が低下したり、逆流性食道炎などを生じることがあります。すぐに息切れしたり、食事をすると胸焼けがする、胃がつかえるなどの症状が出ることがあります。そして何より、格好が悪くなることを気にする方も増えています。
治療ですが、先ほど少し述べたように背中、腰は少し前方へ曲げた方が楽になるため、どうしても徐々に曲がってきます。急性腰痛症のときや腰部 脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の場合などは、むしろ腰を前屈するように指導するくらいです。
背中が曲がってくるのを予防するためには、毎日軽く背筋を伸ばす体操をするのがよいでしょう。時々、高齢者の方に床まで手が届くことを自慢される方がおられますが、骨粗鬆症があるときにあまり前屈を強くするとむしろ圧迫骨折を生じることがあります。また、もともと背中が少し曲がっていれば、若い人より前屈しやすいのは当たり前かもしれません。前屈できることを自慢せず、後ろへそらせられることを自慢したほうがよいかもしれません。
骨粗鬆症があればその治療をします。詳しいことは総論の「骨粗鬆症」を参照してください。