胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)
頚椎から出る数本の神経がネットワークを作る腕神経叢(わんしんけいそう)と、心臓から出て上肢へ向かう鎖骨下動脈あるいは鎖骨下静脈のどちらかが、首の根元の部分で斜角筋や肋骨や鎖骨などにはさまれて圧迫され、肩から腕にかけていろいろな症状をきたす病気です。
片方の頚部から肩、腕にかけての痛み、しびれ、だるさなどをきたします。また、腕の腫れぼったさ、蒼白や顔面のしびれや発汗異常やめまい、吐き気などを伴うこともあります。男性よりも女性が2~3倍多く、多くの患者さんは20~30代で発症します。女性ではなで肩で痩せている方が多いのですが、男性ではむしろ筋肉質の方が多いようです。
頚椎や肩の病気と間違われることが多く、また、MRIなどで頚椎に異常が見つからないため、医師から適切な治療を受けられない患者さんも時々みられます。診断がつきにくいので、医師は常にこの病気のことを念頭に置くことが大切です。頚椎や肩や末梢神経などのほかの病気を除外した後、確定診断のためには、鎖骨下動脈造影を行う必要があります。血管造影などの検査が必要になることもありますので、総合病院の整形外科の受診をお勧めします。
治療としては、初期には局所の温熱療法や体操などで、緊張した筋肉をほぐすことが大切です。消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、抗不安薬などが処方されますが、必ずしもよく効くわけではないので、主治医と相談しながら服用してください。腕が重みで下方へ引っ張られると症状が悪化することが多いので、なるべく、腕を机の上に載せて、肩が下方へ引っ張られないようにしてください。
どうしても保存的療法では症状が軽減せず、血管造影そのほかで確定診断がついている場合に、第1肋骨切除術や前斜角筋切離術などを行うことがあります。