下垂足(かすいそく)(尖足麻痺)、腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)
下腿外側から足の甲側と第5趾(小指)を除く足指にしびれをきたし、足関節や足指の背屈(甲の側へ曲げること)が弱くなるか、できなくなる麻痺です。しびれがない場合もあります。
膝関節の後ろ外側の腓骨頭とよばれる部分に腓骨神経が走っています。この部分には筋肉がなくて、外からの圧迫で腓骨頭のあいだに腓骨神経がはさまれ、麻痺を起こしやすくなります。膝あたりの骨折の合併症による場合や骨折後のギプスによる圧迫、脚を組んでいるときに反対側の膝蓋骨と腓骨頭にはさまれて、いきなり下垂足になって驚くこともあります。
治療はまず原因を取り除くことです。太ももから下にギプスを巻くときには腓骨神経麻痺に注意して、必ず膝の後ろには分厚く綿を巻きます。病院勤務時代に一度、後輩がギプスを巻いた後に、看護師に呼ばれたことがあります。看護師は下肢の手術やギプスの後には必ず足指が天井に向かって背屈できるかチェックをするのですが、それができなくなっていたため呼ばれたのです。患者さんは膝の後ろ外側に痛みを訴えています。すぐにギプスカッターでその部分だけギプスを10cm四方に切り取って、神経の圧迫を除きました。その直後から足指は背屈できるようになりました。麻痺の発見が遅れれば遅れるほど回復に時間がかかるので、看護師さんのチェックのおかげで患者さんも医師も助かりました。