急性と慢性
整形外科の病気では、急性と慢性の違いについてはっきりした定義はありませんが、目安として、急性とは病気や痛みや炎症が初めて生じてから数日、あるいはせいぜい2~3週間以内の場合です。それに対して2~3ヵ月以上続く場合を慢性と考えてください。
急性も慢性も、病気や痛みや炎症の原因はさまざまです。しかし一般的に、急性の場合は、消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)の飲み薬や湿布、坐薬、注射などを用いれば、比較的早く治る可能性があります。急性で痛みが強い場合には、副作用に注意して消炎鎮痛剤を用いれば、炎症を鎮めると同時に痛みも軽減してくれます。患者さんから「痛み止めの薬は一時的なものでしょう?」といわれることがありますが、炎症を火事にたとえると、消火活動を早くして鎮火すればそれ以上は水をかける必要がなくなる道理です。風邪も同じです。風邪薬を早く服用したほうが早く治り、からだが楽です。
これに対して、慢性の場合は炎症だけでなく、老化現象、神経痛、筋肉などの疲労、変形性関節症、血行障害、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、姿勢の問題、仕事、学業、運動不足、冷え、ストレス、心因性などいろいろな原因が複雑に絡みます。急性の場合と異なり、消炎鎮痛剤だけではなかなか痛みが軽減しませんし、薬をやめるとまた痛みが再発します。原因がわかりそれを治せる、あるいは避けられるのならよいのですが、必ずしも原因がはっきりしない場合や原因がわかっても避けられないこともしばしばです。仕事上どうしても同じ姿勢を強いられたり、いつも重い物を持つ場合など、仕事をやめるわけにいかない以上、休みの日に散歩や体操をするなどの総合的な対策が必要です。
基本的には、温める、適度な体操や運動をする、湿布や飲み薬などの消炎鎮痛剤をじょうずに使う、コルセットを活用する、病気を理解し仲よく付き合うことなどが大切です。主治医とよく相談して自分に合った生活様式や治療法を探しましょう。具体的なやり方は個別に述べていきます。