疲労骨折
金属を繰り返し曲げたりストレスを加えると徐々に折れてくる現象を金属疲労といいますが、骨も繰り返し同じ動きやストレスを加えると骨折することがあり、これを疲労骨折といいます。全身のいろいろな骨に疲労骨折は起こりえます。長引く咳やゴルフの練習のしすぎによる肋骨の疲労骨折もしばしば見られます。軍人が重い荷物を背負って行軍するときに足の中足骨が疲労骨折を起こす行軍骨折(マーチフラクチャー)も有名です。陸上部の選手などスポーツのしすぎで脛骨(けいこつ)や腓骨(ひこつ)に疲労骨折を生じることもたまにあります。
最初、レントゲン検査ではっきりと骨折がわからないことがあります。2~3週間後に骨折線が現れ、その後、紡錘形の仮骨形成が見られ、徐々に治癒していきす。
原則は原因を除くことで、たとえば咳ならなるべく早く専門医に受診して咳を止めることです。しかし、スポーツのしすぎの場合、強豪チームのレギュラーや、プロチームのように代わりの選手がいないことが多いアマチュアチームの選手など、スポーツを中断するという判断が難しいことがあります。私が開業前に勤務していた神戸市立医療センター中央市民病院の救急外来に、甲子園での全国高校野球大会に出場中の選手が脛骨疲労骨折で来院したことがありました。彼はセカンドで3番バッターでキャプテンでした。レントゲン検査で疲労骨折がはっきりしていますが、何とか動かすことはできます。明日の試合はどうするか、選手と監督と私とで深刻に悩みました。結局、出場することに決め、もし骨折したらじょうずに治療してあげると約束して宿舎に返しました。翌日の試合で彼は骨折はしなかったようですが、チームは試合に負けました。ハイレベルのスポーツ選手の障害の治療はいろいろ難しいことがあると思います。