神経痛
神経が何らかの原因で圧迫されたり、こすれたり、引っ張られたりすると、神経痛や神経麻痺を起こすことがあります。原因として有名なのは頚椎(けいつい)や腰椎の椎間板(ついかんばん)ヘルニアです。痛みが主な症状ですが、冷たい、熱い、水が流れている感じ、膜を隔てたような感じ、砂を踏んでいる感じ、などいろいろな表現があります。さらに進行すると運動麻痺が生じてきます。
ところが実際には神経痛はヘルニアなどの圧迫だけでは必ずしも生じません。神経の圧迫や狭窄(きょうさく)は確かに一番の原因ですが、神経は徐々に圧迫されたときは案外じょうぶにできていて、ある程度までの圧迫なら症状は出ないことが多いのです。ある限界を超えると、神経に炎症が生じて、たとえば口内炎や靴ずれでひりひりするような炎症が生じます。圧迫を除くことができればよいのですが、ヘルニアなど圧迫がすぐにはなくならないことがよくあります。でも、その炎症を治めることができれば、神経はたとえ圧迫がまだ残っていても、以前と同じように元気になります。口内炎も、治れば歯が頰の内側に当たっても痛くありません。神経痛の場合、その炎症を抑えるために消炎鎮痛剤などを適宜用います。
しかし、中高年になると、神経痛も単なる炎症でなく、さらに神経の循環障害、つまり血行障害が絡んできます。有名なテレビ司会者の方が手術を受けられた腰部 脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、脊椎の中を走る神経の通り道が狭くなり、炎症と同時に神経の栄養血管が狭窄され、神経の血液の流れが悪くなり、下肢の痛みやしびれや歩行障害が出てくるものです。
治療はそれぞれの原因を改善するように組み合わせて行います。内服薬としては、神経の疲労を回復させるビタミンB12は安全なのでまず服用するとよいでしょう。数年前から発売されている、末梢神経の過剰な興奮を抑えるプレガバリン(商品名リリカ)をじょうずに使えばかなり効果的です。