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痛風

 食べ物の中にあるプリン体が体内で代謝されて尿酸ができます。痛風はその尿酸の結晶が組織に沈着していろいろな症状をきたす病気です。男性が女性より圧倒的に多いのですが、これは女性ホルモンに尿酸の排泄を促す効果があるためといわれています。しかし最近では中年以降の女性にも時々見られます。西洋では紀元前のヒポクラテスの時代からこの病気で人々は苦しんできたのですが、日本では明治以前にはなかった病気で、食生活が動物性タンパク質摂取や飲酒の増加など西洋風になるに従って増えてきました。第1趾(足の親指)の付け根(MTP関節)に突然激痛と発赤と腫脹(しゅちょう)をきたすのが特徴ですが、足関節やアキレス腱、膝、外耳などさまざまな部位に発作が起こることもあります。一度に1ヵ所だけ症状が起こります。
 血中の尿酸値が高い人はまず暴飲暴食を控え、肥満があれば体重をコントロールするように努力しましょう。以前は「帝王病」とか「ぜいたく病」などといわれ、肉をあまり食べないようにと指導していましたが、今では肉などからの直接の尿酸の生成は少ないことがわかり、必ずしも食事制限をしません。しかし、やはり食事はいろいろなものをまんべんなく摂取するのがよいでしょう。また、ビールよりウイスキーや焼酎などの蒸留酒の方が尿酸の生成が少ないといわれています。
 以前は痛風発作時にコルヒチンを2時間おきに服用したものですが、副作用の点から現在では普通の消炎鎮痛剤を服用するようになっています。発作のある関節にステロイドホルモンを注射すると効果的です。
 痛風の治療薬としては、尿酸排泄型のユリノームや尿酸生成抑制型のザイロリックなどが有名です。また尿中のpHが酸性だと尿酸の排出が少なくなるので、尿をアルカリ性にする炭酸水素ナトリウム(重曹)を同時に服用するとよいでしょう。最近は日本で開発され、より安全で有効なフェブリクという薬剤も広まっています。これらの薬を服用しながら生活を改善し、血液検査を適宜行って痛風値をコントロールします。血清尿酸値が7.0mg/dlを越えると高尿酸血症と診断され、痛風発作が起こると痛風と呼びますが、痛風発作時は血中の尿酸が関節などに排泄されているために血液検査で7.0mg/dl以下になることもあり、2回以上の血液検査でようやく診断が確定することもあります。尿酸値の高い人はメタボリックシンドロームの頻度が高いともいわれ、最近では尿酸値を6.0mg/dl以下に保つ方がよいとされています。
 痛風は比較的コントロールしやすい病気です。しかし、長期に高尿酸血症を放置すると腎臓に尿酸結晶が沈着して腎不全を起こすこともあるので、主治医とよく相談して、生活の仕方や薬の服用などの指導をしてもらいましょう。

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院長/医学博士 井尻慎一郎
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