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こむら返り

 こむら返りとは、ふくらはぎの筋肉、すなわち腓腹筋(ひふくきん)がつる、けいれんを起
こしている状態です。ふくらはぎの部分を昔は腓(こむら)といっていたので、こむら返りというわけです。「こぶら返り」という地方もあります。同様の状態は、ふくらはぎだけでなく、太ももや手足の指、首などの筋肉にも起こります。
 ありふれた現象ですが、実は原因はまだよくわかっていません。筋肉の伸び縮みのバランスが何かの原因で崩れて、筋肉が収縮したままになります。痛みを伴い、ひどい場合には肉離れ(筋肉の不全断裂)をきたすこともあります。激しい運動の後で筋肉が極度に疲労したり、水泳で冷えて血行が悪くなったり、脱水などで電解質のバランスが悪くなったりして生じることもあります。夜間の睡眠中にもよく生じます。
 妊娠中にも、下肢の血行障害や体重増加による筋肉の疲労などからしばしば起こります。高齢者にも多く、夜間や夜明け前、数人に1人の割合で、かなりの頻度で生じています。
 糖尿病や肝硬変、腎不全、透析、甲状腺機能低下症などの病気、腰部脊柱管狭窄症(ようせきちゅうかんきょうさくしょう)や腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアによる坐骨神経痛が原因になりえます。私も坐骨神経痛があり、よくこむら返りを起こしています。利尿剤などの薬剤を服用しているとき、血液や体液の電解質のバランスが悪くなって生じることもあります。
 治療法ですが、応急処置としては、つっている筋肉をゆっくり伸ばしていきます。伸ばすときにかなりの痛みを感じます。その後はつった筋肉を温めたり、湿布をしたりします。筋肉の肉離れ(不全断裂)を起こしているようなひどい症状の場合は、しばらくスポーツや激しい労働などを控え、徐々にストレッチを増やしていくことが大切です。
 ふだんから、こむら返りを起こしやすい筋肉をほぐすような体操、ストレッチをすると予防になります。睡眠中や夜明け前に起こりやすい場合は、風呂上がりの就寝前に軽くストレッチをしてください。強く揉むのは厳禁です。あらかじめ湿布を貼っておくのも1つの対策です。
 薬剤治療としては漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が有名です。こむら返りが起こりそうなとき、たとえば寝る前に1包飲んでおく、スポーツの前に飲んでおくなど、予防的に服用できます。また、芍薬甘草湯は舌下(ぜっか) などから一部吸収され、即効性があるともいわれているので、こむら返りが生じている最中に服用しても、数十秒から数分以内で効いてきます。いつも持ち歩く手帳やカバンの中、ベッドの横に置いておくとよいでしょう。
 ただし、芍薬甘草湯は頓服タイプの漢方薬で1日1包から2包くらいまでなら副作用は少ないのですが、1日2~3包を毎日飲み続けると、低カリウム血症や水が溜まってむくみを生じる副作用があったり、アルドステロン症など飲んではいけない病気もあるので、医師に相談しながら慎重に服用してください。
 芍薬甘草湯でもこむら返りが取れないときは、さらにデパスなどの筋弛緩作用のある軽い抗不安薬を追加します。これでかなり軽減しますが、デパスを服用すると、夜間トイレに行くときにふらつくおそれがあるので、とりわけ高齢の方は注意してください。
 もちろん原因となる病気があるときは、それをまず治療することが最も大切なので、その専門の主治医とよく相談して対処しましょう。

井尻整形外科井尻整形外科

院長/医学博士 井尻慎一郎
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